食品工場の換気扇清掃事例

2025/12/22

監修者:福井 智明

神奈川県にある食品工場の換気扇清掃事例

神奈川県にある冷凍食品開発会社の本社工場にて、厨房の業務用換気扇5基の清掃を実施しました。
この記事では、取り外さずに換気扇を洗浄するプロの清掃手順や、使用した機材・薬剤の工夫、安全に作業するポイントなどを現場目線で詳しく解説します。
食品工場や飲食店で換気設備清掃の品質を高めたい方にとって、参考になる施工事例です。

今回は厨房に設置された業務用換気扇5基を対象に清掃を行いました。
各換気扇では、油汚れが付着したバックガード(安全網)・プロペラ・ベルマウス(ファンの外枠)・シャッター(羽根奥の可動板)といった各部品を可能な範囲で洗浄しています。
老朽化した安全網は固定式でしたが、今回は慎重に取り外して別途洗浄し、ファン内部は手の届く範囲のみクリーニングしました。

依頼の経緯と現地調査

食品を扱う工場から「換気扇を綺麗にしたい」との相談がありました。
厨房では日常的に調理実験や加熱処理、原材料の加工が行われており、一般の飲食店以上に換気の重要度が高い現場です。
現地に伺って換気扇の状態を確認したところ、設置から年数の経った固定式の換気扇5基に厚い油汚れが地層のように蓄積しているのを目にし、正直その状態には驚かされました。
お客様から「年に1回、スタッフ自身で清掃しているが、作業が大変な割にあまり綺麗にならなかった」とのお話も伺い、プロの手で徹底的に汚れを除去する必要性を感じました。
ただし羽根や網にこびり付いた油汚れを無理に削ぎ落とそうとすると、古い換気扇だけに部品の破損につながるリスクがあります。

食品工場の設備清掃では、破損が異物混入に直結するため安全第一が鉄則です。
私は現地調査の段階で、周辺をしっかり養生して作業すること、そして換気扇は取り外さずに洗浄する方針で進めることをお客様に提案しました。
幸いお客様にもご納得いただき、今回は機械を分解せず現場で洗浄する計画となりました。
古いタイプの換気扇でしたが、外せないからと清掃を諦めるのではなく、現場の状況に合わせた最善策で対応することが大切だと改めて感じます。

見積もり・準備段階の工夫

取り外さない洗浄方法を採る場合、油汚れの状態に応じて洗剤を使い分けることがポイントです。
そこで今回は、浸透型・乳化型・分解型という3種類の洗浄薬剤を事前に用意し、現場で汚れ具合を見極めながら適切に使い分ける体制を整えました。
例えば、まず油の層に浸透して柔らかくする洗剤を使い、その後に油分を乳化させて浮かせる作用の洗剤に切り替える、といった手順です。
最後は素材に優しい弱アルカリ性の洗剤で仕上げを行い、金属へのダメージを抑えつつ確実に汚れを落とす計画を立てました。

また、洗剤が食品エリアに飛散しないよう養生範囲も通常以上に広く設定し、床や調理台の上は二重三重にシートを敷いて保護しました。
作業に使用する脚立も高さの異なるものを3種類準備し、どの換気扇にも安定した姿勢で手が届くよう安全確保しています。
このような準備作業は単に清掃のためというだけでなく、食品を扱う現場の衛生と安全を守るための大事な工程です。
事前段取りに時間は掛かりますが、プロの清掃業者として妥協せず万全の備えをすることで、現場でのトラブルを未然に防げると考えています。

作業当日の清掃手順

施工は工場が稼働していない休日の日中9:00~15:00に行いました。
まず換気扇の周囲一帯に養生シートを張り巡らし、油汚れや洗剤液が飛んだり垂れたりしても調理エリアを汚染しない環境を作ります。
次に浸透型の洗剤を吹き付け、こびり付いた油汚れにじっくり染み込ませました。
厚みを増した油汚れほど一度では落ちないため、何度か洗剤を塗布しては反応を待ち、時間をかけてゆっくり軟化させます。
十分に油が緩んだ段階で乳化剤に切り替え、泡立つ力で汚れを浮かせていきました。

洗剤の作用反応は各換気扇ごとに微妙に異なるため、汚れの落ち具合を観察しながら丁寧に作業範囲と手順を調整しました。
私は「汚れを落とす強さ」よりも「素材を傷めず確実に除去すること」を重視しており、ゴシゴシと力任せに擦るのではなく化学の力で汚れを浮かせるイメージで作業を進めます。
それでも頑固に残る箇所にはヘラやブラシを用いて優しく除去し、再度洗剤を追加して根気強く対応しました。
最終的な仕上げ段階では当初の計画通り弱めの薬剤に変更し、細部まで洗浄した後、水拭きで洗剤分をきれいに拭き取ります。
清掃後はそのまま終わりにせず、ファンや周辺をしっかり乾燥させてから養生シートを撤去しました。
食品工場の厨房ということで、わずかな水分も残さないように徹底し、衛生的な状態で現場を引き渡しています。

清掃の結果と所感

洗浄後、5基の換気扇はいずれも見違えるほど清潔になり、換気効率も均一に回復しました。
調理実験や試作を行う際に発生する蒸気や熱気がスムーズに排気されるようになり、作業環境の快適さと安全性が大きく向上しています。
食品工場において換気能力の低下は製品の品質管理にも影響しかねません。
湿気や匂いが厨房内に滞留するとカビの発生や不快臭の原因となり、場合によっては食品に悪影響を及ぼすリスクも考えられます。
そうしたリスクを防ぐためにも、換気扇を含む換気設備の定期清掃は欠かせないと痛感しました。

さらに、厚く蓄積した油汚れは換気性能を落とすだけでなく、ファンやフード全体の重量増加や機材劣化を招きます。
放置すればモーターへの負担が増え故障の原因にもなり得ますし、油塊が剥がれて落下すれば異物混入につながる恐れもあります。
定期的に専門業者が油汚れを除去することで、設備を長持ちさせるとともに食品への異物混入リスクを低減できるのです。
今回はファンを取り外さない方法で安全に洗浄しましたが、このような手法は古い設備を扱う食品工場の換気扇清掃において有効な選択肢だと感じました。
設備の状態や現場の制約に合わせて柔軟に清掃方法を検討することが、プロとして求められる対応力だと思います。

本記事では、神奈川県の食品工場本社厨房で行った換気扇清掃の工程と工夫について現場目線で詳述しました。
食品工場の衛生管理や設備保全の観点から、プロによる定期的な換気扇清掃が不可欠であることを改めて実感しています。

この記事の監修者

KIREI produce 代表取締役  福井 智明

「KIREIを通じて人々の人生をより豊かに」「世界中をKIREIに」という理念のもと、住まい・ビル・店舗・施設など、あらゆる空間の清掃・メンテナンス事業や新サービス「コーペティションプラットフォーム」「Kirei One」の展開を牽引。
フランチャイズ事業や自社開発のCRM「コスモ」・研修システムなども通じて、現場で働く人たちの地位向上と、利用者の暮らし・ビジネスの課題解決に取り組んでいます。

著書 | 清掃業の起業・フランチャイズ成功法

『はじめてのお掃除起業』
(自由国民社, 2019年6月20日発売)
清掃業界で起業を考える方向けに、実体験をもとにした
具体的なノウハウや成功事例を解説。

メディア出演 | ハウスクリーニング業界の専門家として紹介
TV: 「news every.」「がっちりマンデー!!」「なないろ日和」 ほか

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