ビルの定期清掃スタートに伴うリセット清掃事例

2025/12/03

監修者:福井 智明

東京都のビルの定期清掃スタートに伴うリセット清掃事例

東京都内のビルで日常清掃・定期清掃の新規契約を開始するにあたり、まずリセット清掃と呼ばれる徹底清掃を実施しました。本記事では、建物全体の美観と衛生状態を向上させるためにプロが行った清掃手順や使用機材、剥離剤・洗剤の使い方のコツ、さらに蛍光灯からLEDへの改善提案などを現場目線で詳しく解説します。ビル清掃 リセット清掃の具体的な施工事例として、東京でビルの定期清掃を検討されている方にとって参考になる内容です。

現地調査で判明した課題と提案

管理会社のクライアント様から「現在依頼しているビル清掃業者の仕上がりに不満があるので、契約を切り替えるにあたり現場を確認し、適切な定期清掃プランを提案してほしい」とご相談を受けました。物件オーナー様は東京都内で2棟のビルを保有されています。1棟は1階が飲食店で上階が事務所テナントの地上7階建て、もう1棟は全フロアが飲食店テナントの地上3階建てビルです。現地調査の結果、残念ながら清掃状況にはいくつか課題が見つかりました。

まず、共用部の床やガラスなど清掃の仕上がりが十分でなく、隅々に汚れの蓄積が見られ美観に問題がある印象でした。また、前任の清掃会社による年間の清掃プランでは、外側ガラス清掃のロープ高所作業費用が年間コストの大きな割合を占めていることが判明しました。さらにエアコンの保守点検は実施していたものの、法令で義務付けられているフロン排出抑制法に基づく点検記録(簡易点検の点検簿)が提出されておらず、法令遵守の面で不備がありました。床面についても長期間ワックス剥離清掃が行われておらず、古いワックスの蓄積(ビルドアップ)が酷い状態で、上から何度もワックスを重ね塗りしていたため光沢が失われ汚れを抱え込んでいました。これらの課題に対し、当社では以下のような改善策をご提案しました。

提案1: 外部ガラス清掃の頻度見直し
– 汚れ具合を精査したところ、外側ガラス清掃は現在の頻度より減らしても十分と判断しました。具体的には、人手によるロープアクセス清掃の代替としてガラス清掃ロボットを導入し、外側ガラス清掃は年2回をロボット清掃、年1回を人によるロープ作業とするプランです。ロボット清掃はコストを大幅に削減でき、多少仕上がり品質はロープ作業に劣るものの、現状の汚れ度合いと年間予算を踏まえると最適なバランスです。提案後、外側ガラスはロボット清掃主体で清潔を維持しつつ、年一回の職人作業で細部までフォローする計画としました。

提案2: 法定点検の遵守と記録管理
– エアコンについてはフロン排出抑制法への対応を提案しました。同法では業務用エアコンに3か月ごとの簡易点検と、機器の規模によって1年または3年ごとの有資格者による定期点検が義務付けられています。点検未実施や記録未保管は物件オーナー様自身が法令違反となり、悪質な場合は即罰金等のペナルティに繋がります。そこで現場の全エアコンの型番と能力(圧縮機の定格出力)を調査したところ、すべて7.5kW未満であることを確認しました。この規模であれば法令上は有資格者による定期点検ではなく、管理者自身による簡易点検で対応可能です。私たちはオーナー様に現状をご説明し、今後は3か月ごとの簡易点検の実施と点検簿の確実な保管をお約束いただくことで合意しました。

提案3: 床ワックスの剥離清掃の実施
– 蓄積した古いワックスによる床のくすみは、通常清掃や上塗りでは解決できません。そこで定期清掃計画の中にワックス剥離洗浄の工程を組み込み、初回に徹底的な剥離清掃を行う提案をしました。一度古いワックス層をリセットすることで、本来の床材の輝きを取り戻し、その後のワックス塗布も均一で美しい状態にできます。

提案4: 年間清掃スケジュールと仕様書の提出
– 清掃内容や頻度についてクライアント様およびビル入居者様との認識を合わせるため、年間の清掃スケジュール表を作成してご提出しました。あわせて清掃箇所ごとの作業範囲や仕上がり基準を明文化した清掃仕様書も作成しています。この仕様書はクライアント様にも現場の清掃スタッフ(KIREI crew)にも大変好評で、「どこまでやってくれるのか」「仕上がりのゴールは何か」が明確になるため安心して任せられると評価をいただきました。

リセット清掃の提案と実施内容

上記の提案を踏まえ、定期清掃契約の開始に先立ちリセット清掃という特別清掃を実施する運びとなりました。リセット清掃とは、日常清掃や定期清掃では落としきれない長年の蓄積汚れを一度にリフレッシュするための徹底清掃作業です。今回は通常予定していた床の定期清掃(月次清掃)を1サイクル分スキップし、その代わりに建物全体の各所を集中的にクリーニングしています。ワックスのビルドアップが酷い床面は1回清掃を飛ばしても見た目に大差ないと現場判断したためで、まずは既存の汚れを根本から除去することを優先しました。

リセット清掃では、1階から7階までの共用部を中心に、照明器具、トイレ等の衛生陶器、キッチンシンク、エントランスの金属製サイン板といった箇所にプロの手で特別清掃を行っています。さらに清掃後は汚れが付きやすい金属部分や陶器部分にシリコーンコーティングを塗布し、表面保護仕上げまで実施しました。このコーティング提案は、今後当社が定期清掃を長期にわたって担当させていただく上で、初期段階で美観を維持しやすい状態を作り、日常清掃の効率化を図るねらいがあります。

照明器具の洗浄とLED化のご提案

共用部の天井照明は長年内部まで清掃されておらず、カバーやルーバーにホコリとヤニ汚れが層のように積もっていました。照明自体も蛍光灯器具で経年劣化が見られ、点灯していても空間全体が暗い印象になっていたため、清掃とあわせて照明のLED化についてもご提案しました。蛍光灯は2026年1月以降、順次製造・輸出入が規制される予定です(経済産業省HP参照)。クライアント様もこの事実をご存知ない場合が多いため、照明交換の参考見積もりをご提示しつつ今後の備えとして必ずご説明しています。

まず照明器具のルーバーやカバーを一台ずつ丁寧に取り外し、建物外にある駐車場の水場まで運んでアルカリ性洗剤で洗浄しました。頑固な汚れにはスポンジやブラシも使い、隅々まで汚れを落とします。照明内部の反射板(リフレクター)はウエスに洗剤を含ませて拭き上げ、くすみを除去しました。そして蛍光管(蛍光灯の管球)もソケットから外し、1本ずつ薬剤を使わず水拭きで汚れを拭き取っています。清掃後に蛍光管を器具へ戻す際は、管球に印字されたラベルが必ず下向きになるよう方向を揃えて取り付けました。こうすることでビル利用者がふと見上げた際にも蛍光管の種類が一目で分かるよう配慮できますし、ラベルの向きを揃えること自体、見えない部分にもこだわる美観意識の表れです。

トイレ・洗面台の水垢除去とコーティング仕上げ

各フロアのトイレの便器や洗面ボウルなどの衛生陶器には、日常清掃では落としきれない水垢汚れが蓄積していました。特に蛇口まわりや便器のフチ裏などに白く固着した尿石・水垢が目立っていたため、強酸性洗剤(尿石除去剤)を使用して徹底的に洗浄します。洗剤を塗布し十分な反応時間を置いた後、専用のパッドやブラシでこすり洗いを行い、長年の頑固な水垢を完全に除去しました。強酸性洗剤を扱う際はゴム手袋や保護メガネを着用し、換気をしながら安全に配慮して作業を進めます。洗浄後は薬剤成分が残らないよう水拭きと清水での十分なすすぎを行い、陶器表面を中和処理してから乾拭きで仕上げました。その後、きれいになった陶器表面にシリコーンコーティング剤を塗布しています。

シリコーンコーティングを施すことで、便器や洗面台そのものに汚れが染み付きにくくなり、表面にできたコーティング膜のほうに汚れが付着します。コーティング膜上の汚れは通常より付きにくく、仮に付着しても簡単に拭き取れるため、日常清掃で落としきれず蓄積してしまうような汚れを防止できます。リセット清掃で陶器類を新品同様にリフレッシュした上でコーティングまで行うことで、清潔な状態を長期間維持できるようにしました。日々のお掃除も格段に楽になり、見た目の清潔感も保たれます。

キッチンシンクの研磨清掃とコーティング仕上げ

テナント共用部の給湯室にあるステンレス製キッチンシンクも、蛇口まわりやシンクの隅に白い水垢がこびり付いていました。こちらにはステンレス専用の研磨剤を用いてシンク全体を研磨洗浄しています。スポンジに研磨剤を取り、円を描くように丹念に磨くことでステンレス表面に付着したカルキ汚れやくもりを除去しました。研磨後は水拭きで磨きカスと汚れを綺麗に洗い流し、水気を飛ばして乾燥させます。仕上げにシンク表面へシリコーンコーティング剤を塗布し、薄い保護被膜を形成しました。これによりシンクの金属光沢が蘇り、今後水垢が付きにくくなります。キッチンは衛生面でも重要な場所なので、見た目だけでなく清潔さを長持ちさせる効果が期待できます。

エントランス金属サインの光沢復元

1階エントランスに設置された案内板(テナント表示サイン)はステンレス製ですが、長年の汚れと酸化被膜で表面が曇り、本来の光沢を失っていました。エントランスは建物の「顔」ですので、ここが汚れていると全体の印象も暗くなってしまいます。そこでサイン板も特別清掃の対象とし、まず中性洗剤で表面のホコリや油分を洗浄しました。その後、金属用ポリッシュ(研磨剤)で丁寧に磨き上げています。磨く際は布に研磨剤を付け、ムラにならないよう均一にこするのがポイントです。くすみが取れてステンレス本来の鏡のような輝きが戻ったところで、こちらにもシリコーン系の表面コーティング剤を塗布して仕上げました。金属表面に透明な保護膜を作ることで、空気酸化や指紋汚れを付きにくくし、美しい光沢を長期間維持できるようになります。衛生陶器やシンクと同様、磨き上げた後にコーティングまで行う一貫施工で、今後の美観保持と清掃効率アップに繋げています。

作業時の工夫と安全対策

今回はビルテナントの営業時間外となる土曜日に作業を行いました。しかし7フロア中、1フロアだけは土曜も朝9時から営業されるテナント様があったため、当日は作業開始時間を朝8時に繰り上げ、そのフロアから最初に清掃しました。開店時間の9時までに該当フロアの作業をすべて完了させ、営業に支障が出ないよう配慮しています。また、照明清掃では高所での作業となるため脚立や作業台の安全確認を徹底し、2人1組で支え合いながら落下防止に注意を払いました。強酸性洗剤やアルカリ洗剤を使用する場面ではゴム手袋・保護メガネを着用し、作業箇所の換気や飛沫防止養生も万全に期しています。プロの清掃は仕上がり品質はもちろん、安全管理や周囲への配慮も現場では重要なポイントです。

清掃後に得られた効果と学び

今回のリセット清掃作業が完了した後、建物内の環境は見違えるほど改善しました。まず照明器具内部の清掃によって各フロアの照度が上がり、空間全体が明るく感じられます。トイレや洗面所はこびり付いた水垢が消え去ったことでピカピカになり、衛生的な清潔感が大幅に向上しました。キッチンシンクも輝きを取り戻し、利用者の方々から「シンクが新品のようだ」と好評をいただきました。エントランスのステンレス看板は鏡面のように光沢を放ち、建物に入った瞬間の印象が格段によくなっています。コーティング施工の効果でこれらの美観が長期間維持できる見込みであり、日常清掃も格段に容易になると期待できます。

この施工事例を通じて、ビル清掃において定期清掃の契約開始時にリセット清掃を取り入れることが、建物全体の美観レベルを底上げし、その後の清掃業務を効率化する有効な手段であると再確認できました。また、長年同じ清掃内容が継続している現場でも、一度プロの視点で見直しを行えば改善すべき点が見つかることも学びです。実際、クライアント様の中には「長く委託していると清掃プランを見直す機会がなかった」とおっしゃる方も少なくありません。定期清掃の内容や頻度は建物の利用状況や経年変化に応じて見直すことで、コスト最適化や法令遵守、美観維持に大きな効果を発揮します。

本記事では、東京都内ビルの定期清掃スタートに伴い実施したリセット清掃の工程と工夫を詳しく紹介しました。建物の床や設備を長期的に良好な状態に保つには、プロによる定期的な清掃と適切なメンテナンスが欠かせません。また、清掃品質を向上させるためには現状を正しく把握し、必要に応じて特別清掃や計画の見直しを提案することが重要です。ビル 定期清掃 東京でお悩みの物件オーナー様・管理ご担当者様にとって、今回の事例が清掃計画改善の一助になれば幸いです。私たちKirei Oneでは清掃業務の診断や最適化のご提案も喜んで承っておりますので、いつでもご相談ください。

この記事の監修者

KIREI produce 代表取締役  福井 智明

「KIREIを通じて人々の人生をより豊かに」「世界中をKIREIに」という理念のもと、住まい・ビル・店舗・施設など、あらゆる空間の清掃・メンテナンス事業や新サービス「コーペティションプラットフォーム」「Kirei One」の展開を牽引。
フランチャイズ事業や自社開発のCRM「コスモ」・研修システムなども通じて、現場で働く人たちの地位向上と、利用者の暮らし・ビジネスの課題解決に取り組んでいます。

著書 | 清掃業の起業・フランチャイズ成功法

『はじめてのお掃除起業』
(自由国民社, 2019年6月20日発売)
清掃業界で起業を考える方向けに、実体験をもとにした
具体的なノウハウや成功事例を解説。

メディア出演 | ハウスクリーニング業界の専門家として紹介
TV: 「news every.」「がっちりマンデー!!」「なないろ日和」 ほか

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