海外家具補修事例:モルテーニ製大理石テーブルのマットレジン仕上げ再生

2025/08/04

東京都内の海外家具補修事例:モルテーニ製大理石テーブルのマットレジン仕上げ再生

東京都内の個人宅にて、イタリアの高級家具ブランド「モルテーニ」製の天然大理石ダイニングテーブルを補修しました。

奥様が誤って付け爪用の接着剤をテーブルにこぼしてしまったことが発端です。

本記事では、大理石テーブルの補修方法やプロならではのマットなレジン仕上げの再生手順を、現場目線で詳しく解説します。

高級な海外家具の補修を検討されている方や、同様のトラブルにお悩みの方にとって、役立つ施工事例です。

ご依頼内容と現場状況

ご依頼いただいたテーブルは、モルテーニ社「フィリグリー」シリーズの天然大理石テーブル(約90cm×180cm)です。

黒っぽい石目に白い筋模様が入った高級感あふれる天板で、仕上げにはレジン(樹脂)によるマットコーティングが施されています。

ところがある日、奥様が付け爪用のグルー(接着剤)をうっかり天板上にこぼしてしまいました。

市販情報を頼りにアセトンフリー除光液で拭き取ったところ、接着剤自体は除去できたものの、その周囲の塗膜が溶けて白くくもり、ざらついた輪ジミ状の痕跡が残ってしまったのです。

除光液には強力な溶剤成分が含まれているため、テーブル表面の樹脂塗膜まで溶かしてしまいます。

一度塗膜が溶けて表面が荒れると、光が乱反射して白くぼやけた状態になってしまうのです。

その上、不運なことに除光液が染みたウエスで天板全体を拭き上げてしまったため、部分的に同様の白いムラ・ツヤ消えが各所に発生していました。

大理石そのものは無事でも、表面のレジン塗膜が化学反応で傷んだことでテーブル全体の美観が損なわれている状況です。

お客様は「このままでは愛着あるテーブルが台無しになる」と大変ご心配で、メーカーのモルテーニ社や国内代理店のアルフレックスにも相談されたそうです。

しかし返答は「現状のまま使うしかない」や「修理するなら一度イタリア本国に送り再コーティングするので、時間も費用も莫大にかかる」といったもので、途方に暮れていらっしゃいました。

マット仕上げ大理石テーブル補修の課題

今回の補修で最大の課題は、マット仕上げのレジンコーティングをいかに元通り再現するかでした。

光沢がないマットな塗装は、高級家具ならではの落ち着いた風合いを生み出します。

しかしその反面、部分補修では既存部分との境界が目立ちやすく、ツヤ感の差が少しでも出ると補修跡が浮いてしまいます。

実際、お客様自身も「表面がマットなのでDIYでの補修は難しいのでは」と不安を感じておられました。

また、90cm×180cmという大型の天板全体を均一に仕上げるには高度な技術が求められます。

研磨し直しても石とレジンの複合素材であるため、均一な平滑さとマット感を両立するのは簡単ではありません。

さらに現地(ご自宅)での施工となるため、塗装中のホコリの混入や乾燥時間の管理など、プロの職人技とノウハウが試される現場でした。

幸い当社には石材と塗装の両方に精通した熟練スタッフがいるため、その知見を活かし最善の方法を検討しました。

補修方針の決定と準備

お客様と職人との打ち合わせの結果、傷んだ部分だけを目立たなくするのではなく天板全体を再塗装して新品同様に仕上げる方針となりました。

部分補修ではどうしても境界が残る恐れがあり、せっかくの高級家具ですから最良の状態に戻したいというお客様のご要望も踏まえての判断です。

まずは劣化したレジン塗膜を一度全面的に研磨で剥がし(平滑な下地に戻し)、その上で新たにマット仕上げ用コーティングを塗布していく手順としました。

施工にあたっては、ご自宅の室内が作業場となるため、周囲の家具や床を汚さないよう細心の注意を払います。

天板をきれいに清掃し、細かな埃もエアブローで飛ばしてから作業開始です。

また塗装時は換気と温度管理にも注意し、乾燥を促進するための機材も用意しました。

 

使用した資機材

  • 研磨用スポンジパッド(青色・中〜細目)
    – 溶けて凸凹した塗膜を均一に削るため使用。

  • 3M製研磨シート(複数の番手)
    – 番手を変えながら段階的に研磨し、最終的に細かな傷を残さないようにします。

  • 液体研磨剤(コンパウンド)
    – 研磨後の表面を整えるために一部使用。

  • 2液性ウレタンクリア塗料
    – 下地を平滑に復元するために塗り重ねる透明コーティング剤。

  • マット仕上げ用コーティング剤
    – 最終的なつや消しの質感を出すトップコート。溶剤に強く耐久性の高い製品を採用。

  • ドライヤー(送風機)
    – コーティング中の気泡飛ばしや乾燥促進に活用。

研磨作業:ダメージ除去と下地平滑化

まずは劣化した塗膜の除去と下地調整のため、天板全体の研磨作業を行いました。

特に接着剤をこぼした部分は白く変色して表面がザラついていたため、研磨用スポンジパッドと粗目の研磨シートを使い、丁寧に削っていきます。

力を入れすぎると大理石自体を傷つけかねないので、職人が手加減を調整しながら少しずつ削り取りました。

白く輪ジミ状になっていた箇所が周囲となめらかにつながるまで研磨し、劣化したレジン層を均一に取り除きます。

次に、中〜細かい番手の3M製研磨シートに持ち替えて、天板全面をムラなく擦りならしました。

これにより、元のマット塗装の残りと新しく露出した下地部分との段差やツヤの違いをなくし、全体を均一な艶消し状態に整えます。

研磨後の天板は、一見すると表面全体が曇ったようになり不安に思われるかもしれません。

しかし、これは狙い通りで、新しいコーティングを密着させるための足づけ(細かな傷)を付け、古い傷んだ塗膜を一掃した証拠です。

最後に専用クロスとエアダスターで研磨粉を完全に除去し、次工程の塗装に備えました。

レジンコーティング再施工:平滑なマット仕上げを再現

研磨で下地を整えたあとは、新たなレジンコーティングを施していきます。

まずは透明な2液性ウレタンクリア塗料を薄く均一に塗布し、天板表面の微細な凹凸を埋めていきました。

塗っては乾燥させる工程を複数回繰り返し、50ミクロン(0.05mm)単位で膜厚を重ねながらレベリングしていくイメージです。

職人が毛細筆やヘラを駆使し、気泡が入らないよう注意深く塗り重ねます。

乾燥を早めるために適宜ドライヤーの温風や送風を当て、塗膜の垂れやホコリの付着を防ぎました。

この緻密な層作りによって、傷や段差のない平滑な透明層が復活します。まさに職人技の光る工程です

十分な厚みと平滑さが確保できたところで、仕上げにマットコート剤(つや消しクリア塗料)を全体に塗布しました。

スプレーガンや専用の刷毛を用いてムラなく薄く塗り広げ、一度に厚くなりすぎないよう細心の注意を払います。

塗っては乾燥を数回繰り返し、最終的に均一なマット質感になるよう整えました。

新品当初の落ち着いた艶消しの風合いが再現され、角度を変えて眺めても塗りムラやテカリのない美しい仕上がりです。

使用したマットコート剤は、従来のレジン塗膜より有機溶剤に対する耐性が高いタイプのものです。

これにより、万が一今後またネイル用の薬品が付着してしまった場合でも、すぐに表面が溶け出す心配は少なくなりました。

(とはいえ、強い溶剤の使用は避けたほうが望ましいため、お手入れの際は中性洗剤程度で十分です。)

補修結果と今後のアドバイス

今回の補修施工により、大理石テーブルは見違えるように美観を取り戻しました。

天板全体が新品同様のしっとりとしたマット仕上げとなり、例の白くくもったシミ跡は跡形もありません。

側面や角の部分までムラなくコーティングされていますので、どの角度から見ても違和感がなく、手触りも滑らかです。施工後、お客様にも仕上がりを細かく確認していただきましたが、「どこにシミがあったのか全くわからない!」と大変驚かれ、安堵の表情を浮かべていらっしゃいました。

作業は慎重に進め、約1日かけて完了しました(最終コート乾燥後は翌日から通常利用が可能です)。

今回はプロによる適切な手順で補修したことで、テーブル本来の耐久性も確保されています。

高級家具の補修は専門知識と技術を要する分野ですが、適切に対処すればこのように元の状態に近づけることができます。

最後に、同じような事故を防ぐためのアドバイスです。

ネイルの溶剤や強い洗剤を家具に使用するのは厳禁です。

高級家具メーカーの多くは取扱説明書で「アセトンやアルコールなどの溶剤は使用しないでください」と注意喚起しています。

万一テーブル上で接着剤や塗料をこぼしてしまった場合、焦って市販の溶剤で擦らず、まずは乾いた布で余分をそっと拭き取りましょう。

その後は自己判断で薬剤を使わず、専門のリペア業者やメーカーに相談することをおすすめします。

そのほうが結果的に家具を長持ちさせ、資産価値を保つことにつながります。

幸い、今回コーティングを刷新したことで有機溶剤への耐性も上がりましたので、今後は通常のご使用で問題が生じるリスクは低く、安心してお使いいただけます。

ビフォーアフター

おわりに(まとめ)

本記事では、東京都内で施工したモルテーニ製大理石テーブルの補修事例について、現場目線で詳細に解説しました。

付け爪用接着剤のこぼれによって傷んだ大理石テーブルの補修工程や、マットなレジンコーティングを再生するための職人技をご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。

高級家具の表面仕上げはデリケートで、一度ダメージを負うと一般の方が完全に元通りにするのは困難です。

しかし今回のように、プロの技術を用いれば海外家具の補修であっても、国内で短期間のうちに美しく復元できるケースがあります。

実際、メーカーに送れば数ヶ月と莫大な費用がかかるところ、私たちの施工では約1日で補修を完了させることができました。

大切な家具を長く使うためには、日頃からメーカー推奨のお手入れ方法を守り、異変が起きたときは早めに専門業者へ相談することが肝心です。

今回は適切な処置を施したことで、テーブルの美観と保護機能が両方とも蘇り、もしあのまま放置していたら起こりえた二次被害(汚れの定着や水分浸透による石材劣化)も未然に防げました。

この施工を通じて、プロによる定期的なメンテナンスや早期対応の重要性を改めて実感しました。

今後も高級家具を末永く愛用していただけるよう、私たちも現場で培った知見を活かし、最適な補修・メンテナンス方法をご提案してまいります。

大切な家具のトラブルでお困りの際は、お気軽にご相談ください。

この記事で紹介したサービス

サービスをもっと見る